Let me see
先日、国外へ出張した時のエピソードである。
英語力(リキ)が無に等しい私であるが、忙しくて他に行ける人がいない、誰でもいいから上司の荷物持ちで来てほしい、君しかいない、などの熱烈オファーによりしぶしぶ参戦することとなった。「誰でもいいから」とかはオブラートに包んでほしかった。そういうの結構気にするタイプなのよ。
急に決まった出張であったが、急いでパスポートの申請や飛行機のチケット手配、ホテル予約をしてなんとか旅支度完了。
いよいよ出国の時となった。
日本ーイギリス間の約13時間のフライトは、機内のビデオを見て暇を潰した。
イッテQ!、水曜どうでしょう、アメトーークといったバラエティ番組から、ドリカムのベストアルバム、英語字幕付きの笑点などラインナップは素晴らしかった。仮眠をとっている人が多数いるなか、フライト中のいわゆる笑ってはいけない時間、に、出川哲朗のリアクションをサイレントで見なければならないのは多少こらえたが、なんとか出張先へ到着。
パスポートと入国カードを手に持ちいよいよ入国審査である。
入国審査といえば、外人さんとの英語でのやりとりがあることは予習していたが、上司が一緒に受け答えをしてくれる予定であったので会話内容については全くのノープラン。ナメきっていた。
入国審査のために並ぶ長蛇の列も、いよいよ我々の番となった時、なんと一人づつの取り調べになるという情報が舞い込んできた。
慌てて10年前に購入した電子辞書を取り出そうと試みるも、即座に屈強な黒人に手招きされ、ノールックでカバンを漁りまくるニコニコ東洋人という射殺待ったなしの状態で8番ゲートに特攻する羽目となった。
「くぁwせdrftgyふじこ〜」
多分何か質問をされている(語尾が上がっていたので)のだが、全くヒアリングできず、こちらも何も言葉が出てこない。
確か数秒の沈黙が続くと個室へと連行されて荷物検査をされると勘違いをしていた私は、相槌を打とうと決意。
そもそも「え〜っと」という相槌を英語でなんというかもすぐ出てこず、数十秒の沈黙を得て、私のシナプスが声帯に与えた指示は「Let it go」という単語。
冷静に考えると、質問した相手が、いくらかの間をおいて「ありのままに」なんて言い出したもんだから相手方にとっては不審極まりない状況なのである。ありのままに別室へ連行されても文句は言えない。
その後はとにかく笑顔で「イエッサー」を連呼することで難を逃れた。
この出来事のせいなのか、出張中は初日からお腹を下し、ありのままに常に下痢であった。